令和5年度 東京都精神科医療地域連携事業公開講演会


2023年11月25日(土)14:30〜17:30 昭和大学附属烏山病院 入院棟1F 食堂ホール

司会 岩波 明(昭和大学附属烏山病院 院長。以下、岩波):

 それでは、後半の最初の演題というかセッションを始めたいと思います。タイトルは「発達障害なわたしたち」というお話を現役の漫画家の町田さんに伺いたいと思います。あと、町田さんの担当の編集者の神成さんもご一緒にお話を伺える予定になっております。

 資料集は順番がちょっと逆になりまして、町田さんの作品を一つ掲載させてもらっているんですが、後ろから見るようになっていますので、そこをぱらぱらと見ていただければと思います。どうしましょうか。

 最初にPowerPointで少しイントロをやっていただくんでしょうか。

神成 明音(編集者。以下、神成): はい。

岩波:じゃあ、町田さんと神成さんのほうからよろしくお願いいたします。

神成:よろしくお願いします。

町田 粥(漫画家。以下、町田):よろしくお願いします。

講演② 『発達障害なわたしたち

      町田 粥  漫画家  神成 明音  編集者


神成:こんにちは。本日はお越しいただいてありがとうございます。今、岩波先生からご紹介にあずかりました、「発達障害なわたしたち」という漫画の連載をしております漫画家の町田粥さんと、担当編集の神成明音と申します。本日はよろしくお願いいたします。

 

町田:よろしくお願いします。

 

神成:まず、こちらの漫画をお読みになられた方、いらっしゃいますか。――あっ、ありがとうございます。全然お一人もいらっしゃらなくてもしょうがないと思って来ていたのでとてもうれしいです。ありがとうございます。

では、軽く私たちの自己紹介をさせていただきます。

 

 まず町田粥さんのご紹介です。漫画家さんです。デビュー作の「マキとマミ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~」全4巻が発売中です。こちらは「このマンガがすごい!2019」オンナ編の第8位、「WEBマンガ総選挙2018」7位入賞など、とても熱い支持を得ている作品で、推し活漫画のはしりと言っても過言ではないんじゃないかと思います。

 あと、Twitter(現X)からデビューする作家さんが最近すごく増えていらっしゃるんですが、町田さんは、そのはしりでもあると思います。ツイートで漫画を投稿して、それがすごくバズったことをきっかけに商業誌デビューするという形が最近とてもメジャーになっているんですが、その先駆け的存在と言っても差し支えないと思います。

 その作品の後に、私が担当しております『FEEL YOUNG』という雑誌で、ストーリー漫画の「吉祥寺少年歌劇」という、宝塚歌劇団の逆で男の子だけの架空の歌劇団がテーマの作品をやっておりまして、こちらの連載と、こちらのエッセイ漫画「発達障害なわたしたち」を同時に連載中です。どちらもよろしくお願いいたします。

 

 続けて私の自己紹介もさせていただきます。私は漫画編集者で、株式会社シュークリームという編集プロダクションで働いております。『FEEL YOUNG』という雑誌の担当デスクを務めているほか、『onBLUE』というBLの漫画雑誌でも担当を持っております。

 担当作を一部ご紹介させていただきたいんですが、左から、「女の園の星」という作品です。こちらは「このマンガがすごい!2021」のオンナ編の第1位をいただきました。(会場拍手)ありがとうございます。すみません。すごいのは漫画家さんで、私ではないのであれなんですけれども。

 「ジーンブライド」という作品はSFとフェミニズムを掛け合わせたような内容になっていまして、こちらも「このマンガがすごい!2023」オンナ編の第2位を受賞しております。また、7月期に日本テレビ系で実写ドラマ化しました「こっち向いてよ向井くん」という作品も担当しております。ほかにも数作、同時並行で担当しております。

 

  こんな私たち2人が一緒に作っているのがこの「発達障害なわたしたち」という作品で、主に大人の発達障害当事者の方にインタビュー取材をして、それをそのまま漫画にするというような体裁です。一応登場人物は私たちではあるんですけど、私たちではないというていで、「Mちだ」さんと「K成」という登場人物でやっています。

 この漫画を立ち上げるに至ったきっかけとしましては、2人ともそれぞれ何となく思い当たることがあって、互いに相談したとかでは全くないんですけれども、それぞれ同時期に診断を受けて、2人とも軽度のADHDと診断されたということがあります。あと、町田さんの主治医が、そちらにいらっしゃる岩波先生だったということがありまして、岩波先生がひょっとしたらご協力くださるのではということで、お力をおかりして、監修についていただいて連載を始めました。ということで、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 

町田:よろしくお願いします。

 

岩波:自己紹介、ありがとうございました。あまりかたくならずに、いつもの感じでお話しいただければと思います。町田さんのそのマスクは、いつもお使いになっているトレードマークなんでしょうか。

 

町田:そうですね。最近、こういう場でトークをさせていただく際には手をかえ品をかえマスクをさせていただいて、ごめんなさい、こんな顔で。よろしくお願いします。漫画家はあんまり顔を出さないほうがいいと言われているので。

 

岩波:まず町田さんにお伺いしたいのは、漫画家はいつごろから志されていたんでしょうか。本気で頑張ろうと思ったのは特に何かきっかけみたいなものがあったんでしょうか。

 

町田:私は、小学校に入ってから本格的に将来の夢を考え始めたのが漫画家というのが最初にありまして、小さいときからほぼ漫画家一本という形で夢見てきたタイプなんですけども、漫画家になったのは6年ぐらい前、もう20代は終わって30代に入っちゃってから。というのも、漫画家になるためには、さっきもちょっとお隣の八木(淳子)先生ともお話ししてたんですが、原稿用紙8枚から16枚とか32枚という決まりがあって、決まりどおりに漫画を描くのは難しかったんですね。決まりどおりにおさめるのがどうしても難しいということで。

 

岩波:それは多くなっちゃうということですか。

 

町田:終われない。ルールどおりにうまいこと終わることができなくて、そのうち飽きちゃうんですね。それでどうしてもうまく描き上げられなくてなかなか漫画家になれなかったんですけど、最終的には、Twitterで「マキとマミ」というデビュー作が話題になるという形で、ズルみたいな形で漫画家になることができました。今はよくあることなんですけど、当時ははしりだったかなと思います。

 

岩波:そうすると、いろいろ漫画のお作法というか、あると思うんですが、それはみんな独学で勉強されたわけですか。

 

町田:独学……。そうですね。作法……。漫画はもう意外と描いてみたら描けたタイプだったので。

 

神成:天才肌ですよ。

 

町田:どこかで習ったというのは、漫画家になってからという形です。今はこの iPadとかパソコンがあれば誰でも描ける時代なので。インクで描くとこすっちゃったり、慌てて描くので紙を破いちゃったり、雑なので、それがうまく相性が合わなくて、パソコン様々です。

 

岩波:そうすると、作品はもう全てPC上か iPadで描かれているということでしょうか。

 

町田:そうです。はい。

 

岩波:漫画家になる前にいろいろお仕事をされてたと思うんですが、その辺の仕事の経験みたいなのと漫画家さんとの関係というんでしょうかね、役立ってたところもあったのかそれともあんまり関係なかったのか、いかがでしょうか。

 

町田:職歴は、IT系のお仕事を2社経験した後、フリーランスのイラストレーターという形で経験してきまして、ITの仕事が何か役に……? でも、こういうパソコンソフトの操作ですかね、イラストレーションにつながるような仕事が、いきなり漫画を描くというときにも生きてきたかなというのはあります。

 

岩波:今日来ておられる方とか配信を聞いてる方で、イラストレーターとか漫画家さんを目指したいという人も結構いらっしゃると思うんですが、そういう若い人にアドバイスみたいなのがもしあれば教えていただけますか。

 

町田:アドバイス……。ほんとに描き始めること。助走が長いタイプの方が多いんじゃないかと思うので、まず描いてみようというところですね。まず描いて出してみよう。私は30歳になってから漫画家になったタイプなので、ページが足りなくてもいいし描きかけでもいいから、まず発表するというのが大事だったなと思います。

 

 

岩波:テーマというのはどういうふうに。現在連載されているのは割とご自分に寄せたところだと思うんですが、いろいろな作品を描かれている中で、テーマをどのように生み出しているのか、あるいは考えているのかというあたりはどうでしょうか。

 

町田:やっぱり好きが高じて。最初の作品(「マキとマミ」)が、オタクといっても、もう好きな作品は流行ってなくて、私だけが好きなんじゃないかという作品を胸に抱えてるというのがテーマで、それは自分のことでしたし。今連載している「吉祥寺少年歌劇」も、好きな宝塚から着想を得たというのがあったし。「発達障害なわたしたち」は、自分の経験したことや言語化されたことで、「ああ、すごいすっきりする、こんなにすっと胸に落ちてくるものがあるんだな」というので、みんなにも読んでほしいと思って。やっぱり自分ベースで思いついてます。

 

岩波:じゃあ、ちょっと話題を変えまして、発達障害的な話に移りたいと思うんですが、お子さんのころ、すごく忘れ物が多くてというようなことを前に伺ったんですが、小学校のころのご様子とか、どんなお子さんだったとか、思い出があれば教えていただけるでしょうか。

 

町田:私は特別自分が困った子だとは思ったことがなかったんですけども、忘れ物女王という、夏休みの宿題はやらない、出さないというのが当たり前で、学校の宿題もなかなか出すことができないというのが義務教育から高校ぐらいまでずっと続いたというのがありました。それを自分でだめなことだとあんまり思ったことがなかったので、後からよく考えたら、あれはよかったのだろうかと思ってる状態なんですけども。

 

岩波:先生から叱られたりしなかったですか。

 

町田:叱るタイプの先生じゃなくて、「今日は持ってきた?」と何カ月もずっと言われ続けるみたいな。「もう秋だけど、夏休みの宿題持ってきた?」みたいな感じで、毎時間言われるみたいな状態だったんですね。ずうっと何か気まずいと思ってた記憶はあるんですけども。それに対して忘れ物の女王と後ろに張り出されたりして、ちょっといい気分になったりして、ちょっとずれてたのかなと思うんですけど。(笑)

 

岩波:確かに、忘れ物女王様とか忘れ物チャンピオンと呼ばれてる方は時々いらっしゃいますよね。

 

町田:はい、そうなんですよ。

 

岩波:その辺、ご家庭というか、お母さんがチェックしたり、そういうこともなかったんでしょうか。

 

町田:そうです。3人きょうだいで真ん中なんですが、結構ほっとかれぎみの、完全に手が回ってないタイプのもので、本人は平気そうに暮らしているので、そこを親からチェックされたという記憶があんまりありません。

 

岩波:そうすると、子供さんのころは困り事というのはあまり生じてなかったわけですね。

 

町田:そうですね。最近思い出したんですが、小学校2年生のときに、先生の机に行って、プリントがわっと乱雑に積んであって、そこにはさみがあったんですね。はさみを手にとって、切りたくなっちゃったから、先生の机の上のはさみで切り始めたんですね。ちょきちょきっと細かくフリンジみたいにしていって、そしたらその流れで自分の手をちょきっと切っちゃったんです。ばっと血が出て、瞬時に、先生の机の上のプリントを切ったから怒られちゃうと思ったんですけど、先生が来て、私がいっぱい血が出てるのを見て、わあっと言って保健室へ連れていってくれて、不問になったという記憶があって、これって何かあれだったのかとか。(笑)

 

岩波:それはもう、先生によっては激怒する先生もいたんじゃないかと思いますけどね。

 

町田:そうですよね。はい。でも、けがのほうに意識が行っていただいて大丈夫だったんです。

 

岩波:ということは、割と思いつきで行動しちゃうようなことが多かったんですね。

 

町田:そうですね。はい。けがとかは結構あったと思います。

 

岩波:その辺は大人になってからはどうでしょうかね、行動パターンというのは。

 

町田:行動パターン……。衝動が強いのはすごくあるかなと思います。電車のドアに激突しちゃったり、飛び込み乗りしたり。

 

神成:駆け込み乗車。

 

町田:駆け込み乗車をしようとして頭ががんとぶつかっちゃったり、そういうのは全然直ってない。あ、何か漫画に書いてありますね。小学校のころ、さまざまな悪さ。

 

岩波:結構、発達障害、特にADHDの特性がある方は割といたずら好きの人が多いって。

 

町田:そうですね。

 

 

岩波:やっぱりそういうところがありましたでしょうかね。

 

町田:いたずらはいっぱいしました。

 

岩波:割と皆さんケアレスミスが多いとか抜けが多いということがあるんですが、会社にお勤めになってるときは仕事上で特に何か困ったことというのはありましたか。

 

町田:それもずっと忘れていたんですが、ITの会社に入って――あんまり見ていらっしゃらないかなと思うから言うんですが――、100万人登録キャンペーンみたいなのを打ったんです。今まで何万人も登録してくれたからみんなにメールを送ろうというシステムを私が任されて、メールを送ったらそれがすごくバグってて、何万人にもバグったメールを送ったという経験があったんですよ。

 

岩波:それは会社的に相当まずいことにはならなかったんですか。

 

町田:ならなかったんですよ。セーフだったんです。私のしわざだって見つからなかったんですね。それを送られてきた人も、何かバグってますよとは言ってこなくて。

 

岩波:それはかなりラッキーだったんですね。

 

町田:そうなんです。はい。とってもラッキーでした。

 

岩波:よくあるパターンとしては、仕事上、言われたことが抜けちゃうというんでしょうかね、口で言われたことがスルーしちゃうみたいな特徴がある人が多いんですが、そういったことはありましたでしょうか。

 

町田:言われたこと……。

 

 

岩波:指示されたことが、やると言ったけど忘れちゃってみたいな。

 

町田:それはあると思いますね。はい。

 

岩波:そんなに問題にはならなかったんですね。

 

町田:そうですね。それ自体を忘れちゃってる可能性もあるんですけど。(笑)

 物覚えが悪いのはすごくあって、インタビューされているときに、質問を答えてる途中で何を聞かれたか忘れちゃうというのがよくあって、そういうところはあるんじゃないかと思っています、今も。

 

岩波:ちょっと神成さんにお伺いしたいんですが、最初に町田さんにお会いしたのは何年ぐらい前だったんですか。

神成:ええと、4年ぐらい前ですか。

 

町田:3年前ぐらい。

 

岩波:3年前。

 

町田:はい。

 

岩波:それ以来、担当を継続されて。

 

神成:はい、担当させていただいています。

 

岩波:最初はどんな印象だったんですか。

 

神成:最初は、すごくしっかり者という印象がありまして。私、町田さんが弊社に持ち込みに来てくださるときより前からTwitterを拝見していて、すてきな漫画家さんだなとずっと思っていたので、来てくださって本当にうれしかったんですが、Twitterでの発言も結構しっかり者感がありましたよね。

 漫画家の常識や出版業界の通例みたいなことにすごく疑問を持たれるんですよ。原稿料が安いんじゃないかというようなこととかを常に発信されている方で、編集者からするとドキっとすることもいっぱいあるんですけど。でも、ご自身の視点を持って、現状に甘んじないし、発信することをいとわないということが、すごくしっかり者なんだなという印象でした。

 

町田:一石投じがち。

 

神成:そう、一石投じがちで。担当させていただくのが決まったときも、絶対にうかつなことをしてはいけないという気持ちでした、最初は。

 

岩波:それが2年3年たって変わりましたか。

 

神成:大分変わりましたね。しっかり者というか、意見を言いたいというところはお変わりないんですけれども、実務的なミスが互いに多くて。私がメールを送りそびれてたり、町田さんが締め切りを忘れてたり、私もこれ連絡するのを忘れてたみたいなことがあるので、それを許し合って関係が続いているなと思っています。

 

岩波:神成さんの子供時代は、不注意さで困ったようなことというのは何かあったんでしょうか。

 

神成:家の鍵を落としたりはしていたんですけれども、実は私は割と勉強が苦にならないほうで、勉強ができていると大人から何か言われないので…。多分困り事はあったと思うんですけど、自分でもあんまり自覚できないまま大人になってしまったなと感じています。でもテスト勉強は全部一夜漬けでした。

 

岩波:今、編集者として、ミスが多いとか時間管理とかはやっぱりかなり困ると思うんですが、その辺はどういうふうに対応されてるんでしょうか。

 

神成:うっ…、その通りで、かなり困っています。しかし、編集者という職業上、得意なことが一つ飛び抜けてあれば他はやや許されるというところが若干ありまして…。恐ろしいことだと思うんですけれども。

 私はすてきな漫画家さんを見つけて熱心に口説いて一緒に作品をつくるということがすごく得意で、それは会社の利益と直結しているので、そこがあるから書類を締め切り通りに提出していなくても許されたりしていて。本当にすみません。こんな大勢の前で言うことでしょうか。

 あと、時間の管理に関しては、作家さんにお会いすることがやはり多いので。作家さんから嫌われたくないという気持ちがすごく強いので、時間を間違えても、遅れるぐらいなら1時間前に着いてたほうがいいと自分に言い聞かせて、遅れることはあんまりなくなりました。

 

岩波:そうすると、そこの時間管理については、ご自身で相当頑張ってコントロールをされているということでしょうかね。

 

神成:そうですね。今でも自然にできるということでは全くなくて、頑張っているからできるということです。

 

岩波:よくありそうなのは、例えばメールの見落としとか。

 

神成:おお、そのとおりです。

 

岩波:締め切りをちょっと忘れちゃったり。

 

神成:ああ、それもすごくお恥ずかしい話なんですが、作家さんの前ではとにかく頑張っていて。

 やりとりをしている会社の方、――今日もお手伝いにきてくださっているので、かなり恐縮なんですが――、この漫画(「発達障害なわたしたち」)の版元である祥伝社さんからのメールは忘れていても許してくださるからずっと忘れているという感じです。あと、先方がもはや私の返信忘れに慣れてすごく催促してくださる。

 

岩波:そうすると2回目3回目が来る感じですよね。

 

神成:2回目3回目が来て「今日じゃないと困ります」と書いてあるので今日やろうとなってやるという感じです。

 

岩波:でも、それでも、そういうことがありつつもしっかり編集のお仕事をなされてるって、企画力というんでしょうかね、そこはすごく評価をされているということなんでしょうかね。

 

神成:そうですね。あと、弊社が小さい会社なので、それでも許されているという感じで、総合出版社とかにいたら多分何もできなかったと思います。

 

岩波:そんなことはないと思うんですけど。

 ちょっと話題が変わるんですが、昔、漫画家の方とか作家の人のいろいろな特徴を調べたことがありまして、漫画家の方は発達障害、特にADHDの方が多いような印象があるんですが、そのあたり、町田さんと神成さんからコメントというか意見を少し教えていただければと思います。

 

町田:私、漫画家の友達はあんまりいなかったんですけど、この漫画を出してからいっぱい漫画家さんに話しかけられるようになって、DMが来て、私も実はそうなんですと言われたことが10件以上。大御所の漫画家さんもすごく話しかけてくれて、私もそうなんですとメッセージを添えて、仲よくしてくださるんですよ。

 

岩波:そうなんですか。

 

町田:なので、関係ないかもしれないですけど売れている漫画家の方はとても多いんじゃないかと私は思います。

 

 

岩波:その理由としては何が考えられるでしょうかね。

 

町田:理由……。これ?(両手を目の脇に添えて視野を狭める動き)

 

神成:ああ、どうなんでしょう。過集中に入りやすい方が多いのかなということと、やはり人間性に凹凸が、でこぼこがあったほうが、作品として伝えたいメッセージが生まれやすいのかなというのを感じています。

 

町田:それはあります。

 

神成:私が担当させていただいている方の中で、町田さんタイプのADHDの方はあんまり他にいなくて、町田さんはものすごく締め切りを守れるんですよ。全然おくれない。締め切りそのものを忘れててイラストを上げないよというときはあるんですけど、基本的には漫画の締め切りは守ってくださるんです。

 むしろ町田さんが例外で、本当に締め切りを守れないタイプのADHDの方もすごく多いなと思います。

 

岩波:そういう方には編集者としてどういう対応をされてますか。

 

神成:そうですね。締め切りを細かく区切るということぐらいしかないんですよね。大ざっぱに、じゃあ20日締め切りですのでと言っても自然とは上がってこないので、原稿の締め切は20日だけれども、ネームの締め切りは10日、下絵の締め切りは13日みたいな感じで刻んで、どうですか、どうですかとしつこく連絡をするという感じですね。あとは、何日か遅れることを前提に、本当の日程より早い締め切りを伝えておく。

 

岩波:さっき過集中という言葉が出たんですが、町田さんも作品を描く上でそういう過集中的なことというのは結構あるんでしょうか。

 

町田:私、過集中、ないなって。漫画を描く上で過集中、起きたことがなくて。

 ずっと気が散って頑張ってる状態です。

 

岩波:これは漫画家さんに限らず、美術家の人とか、あるいは科学者なんかでも、とことんやり続けてしまって寝食を忘れてみたいな方は比較的いらっしゃるんですけど、あまりそういうことはない?

 

町田:うわさでは皆さんそうだとおっしゃるんですけど、私に限ってはないみたいで、困ってます。

 

 

岩波:神成さんからごらんになると、ほかの方は結構過集中的な方が多いでしょうか。

 

 

神成:そうですね。私もすごく過集中が強いので、作家さんに対してお気持ちがわかることも多いんですけれども。そういう作家さんは、例えば、過集中のときに3日で原稿を上げられたみたいな記憶がすごく脳にしみついてしまっていて、過集中に入れない時は7日とか10日とかかかるんですよ。でも「始めれば3日でできるから」と、始めるのがすごく遅かったりして、先延ばし癖と過集中のよくない組み合わせみたいな感じの方も多いですね。

 

 

岩波:それはいろんな方で多いですよね。

 先延ばしして最後に頑張れば何とかなると思って、何とかならないというような。

 

神成:何とかならないんですよ。1日風邪を引いたらもう終わりじゃないか、この進行は、という感じなんです。

 

岩波:神成さんは過集中になるときはどういうタイミングでなることが多いですか。

 

神成:ああ、タイミング……。

 

岩波:タイミング、あるいは状況というんでしょうかね。

 

神成:ああ、最近思ったのは、よく寝たほうがいいということがわかりまして。皆さんご存じですか、よく寝たほうがいいことを。すごくよく寝てしまって、10何時間寝て、はっと起きたときに、すごく何でもできるという感じになります。でも、今は小さい子供を育てているので、集中して寝るというか、長く寝ることがなかなかできなくて、いつも100%の力が生まれない、いつも60%で生きてると思ってると過集中はあんまり入れないです。

 

岩波:やっぱり調子がいいときのほうが過集中に入る感じですかね。

 

神成:そうですね。

 

岩波:例えば、もちろん診断されたわけじゃないんですけど、昔の偉人でいうと、漫画家さんじゃないんですが、あのエジソンとか、あるいは日本の野口英世さんとか、漫画家だと多分、水木しげるさんがどうもADHDっぽいんですが、かなり過集中的に仕事をして。

 例えば野口英世なんかは、有名な話だと、実験室でずうっと実験をしてそのまま寝ちゃって、パジャマを持ってない、普通の白衣のまま寝て、起きたらまた実験をしててみたいな、アメリカ留学中はそういう異常な生活をずうっとしてたらしいんですが、漫画家さんでもそれに似たような方っていらっしゃるでしょうね。

 

神成:いらっしゃると思いますね。原稿を始めちゃうと食べるのを忘れちゃうという方が担当させていただいている方で何人かいらっしゃって、食べてくださいという。

 

岩波:健康にはやっぱりよくないと思いますけどね、それは。

 

神成:はい。

 

岩波:ちょっとまた話が変わるんですが、企画力とか発想とか、漫画についてもそうだと思うんですが、そういうところにすぐれた方というのは、漫画家さん、あるいはADHDの特性を持つ方が結構いらっしゃると思うんですけど、例えば患者さんで投薬とかして、そういうのがちょっと損なわれるというんでしょうかね、発想がちょっと少なくなっちゃうみたいなことをおっしゃる方がいるんです。

 我々はそういう発想が豊かなのをマインドワンダリングと言うんですが、これは心理学の用語なんですが、漫画家さんとか、あるいはご自身で、そういうマインドワンダリング的な企画とか発想力とか、そういうのを感じることは結構ございますでしょうか。お2人に伺いたいんですが、町田さんはいかがでしょうか。

 

町田:私は先ほども過集中の時間があんまりないと言ったんですが、本当に仕事中ずうっと違うことを考えていて、何かSNSを見たり、コーヒーを熱いのがいいと思って温め直しに行ったり入れ直したり、コーヒーを入れたら甘いおやつが欲しいと思って探しに行ったり、なかったら出かけちゃったり、ずうっと気が散ってる状態なんですけど、そういうときにアイデアっておりてくるんです。

 出会いがあるとか、ほんとにずっとアイデアを出そう出そうと思ってると出ないけど、全然関係ないことをしてたり、1人でお風呂に入ったり、そういうときにおりてくるなという認識があって、岩波先生にそうなんですよと言ったら、マインドワンダリングというんですよと言われて、「(ヘレン・ケラーの)ウオーター!」みたいな気持ちになって、すごい、名前があるんだと思った感じです。

 

 

岩波:神成さんはいかがでしょうか。

 

神成:私も一瞬で何をやろうとしていたかすぐ忘れてしまうので、よくわかります。

 

岩波:会社員の方なんかでも、調整能力は非常に苦手なんだけども、そういう企画力というか発想だけはいいみたいな人が普通の会社の商社とか銀行の方でもいらっしゃって、頭はいいのでそこそこ出世するんですけど、もう一押しがなかなかできないというか。日本の会社というのは割と、出版社は違うかもしれませんけど、総合職的なことを求めてて、どんなこともある程度ずつできないとだめみたいな、企画だけすぐれててもだめみたいな方が多いんですけど、出版社なんかだとどうでしょうか、神成さん。そういうところはありましたか。

 

神成:はい。いや、私がそういう方の代表ということは全然ないんですけど。私よりはちゃめちゃに優秀な方がたくさんいらっしゃるので。でも、他社の大手出版社とか見てても、編集者としてすごく優秀で、テレビとかにも出て、たくさんヒット作を出してるみたいな方って、独立される方が多いなという印象を受けます。

 出版社って大体、ヒットを出して偉くなっていくと編集長にならなきゃいけないんですけど、編集長ってもう、漫画の編集だけしていればいいわけじゃなくて、人を束ねる仕事なんですね。ヒット作を出すことと人を束ねる仕事って全くイコールではないので、なかなか……。

 編集長になってもう現場の仕事ができないということが嫌で、現場の仕事を続けるために独立される方とかもいらっしゃいますし。逆に言うと、人を束ねるのは得意でもう現場のお仕事をされてないという人のほうがずっと組織の中で出世していかれるんだろうなと、他社のことですけれども、見ていて思います。

 

 

岩波:そうなんですね。そういう管理能力というか調整能力がどうしても重視されちゃうみたいなところが、社会的にも企業でも多いのかなと。

 最近、たまたま割と有名な企業の部長職ぐらいの人が受診されたんですが、ADHDの特性をお持ちなんですが、部下が10人ぐらいいると。部下の面倒を見ろと言われてるんだけど、面倒くさいからあんまり見てないと。どうしているかというと、最後は自分で全部やっちゃうんだと。そうすると会社のほうはちゃんと面倒を見ないとだめだと。でも俺は仕事をちゃんとやってるからいいだろうというような、開き直るらしいんですが、結局さらに上にというのがなかなか難しいみたいなことを言っておられたんですけどね。なかなか組織のそういう問題というのはあるみたいですね。

 

 今日お集まりの方は、当事者の方も、あるいはご家族の方もいらっしゃると思うんですが、何か当事者や家族に対するメッセージみたいなものがもしあれば、神成さんから一言二言でもお願いできるでしょうか。

 

神成:すみません、ぼうっとして。(笑)当事者の方。

 

岩波:当事者の方とか、家族会の方もたくさんお見えになってるんですが、そういう方に向けての何か一言があれば。

神成:はい、ぜひ漫画を読んでいただいて、わかる、わかると言っていただけたらうれしいんですけれども。

 私は大人になってから発達障害という診断を受けまして、自覚はなかったけれども、苦手なことを避けて生きてきたんだなというのが大人になってからの実感なんですね。勉強は得意だったからずっと学生時代は上手にできてたけど、仕事を始めてみたら苦手なことがたくさんある上に、ずっと克服できなくて、今は得意なことでたまたま評価していただけて、たまたま会社で働けているというだけなので。

 当事者の方で、そんなふうにうまくできないよと思う方もいらっしゃるかもしれないんですけど、苦手なことと得意なことをまず分けてみることから始めてみてはいかがかしらと思っております。得意なことなんかないよと思っても、苦手なことはきっとあると思うんですよ。苦手なことややりたくないことを避けて避けていって、残ったものをやってみるというようなことはどうかなと思っております。

 どのようにか、どんな社会でも適材適所をやっていったらいいのになと思っているので、ここが苦手で、しょうがなくて、もう生きるの全部嫌だとならないで、どこか得意なことが、できるところがあるんじゃないかというふうに、社会の中で居場所を探していただけたらいいなと思います。

 

岩波:ありがとうございます。町田さんからはいかがでしょうか。

 

町田:私は発達障害という言葉を知ってすごく肩の荷をおろすことができたんですね。

 自分のことは結構好きなタイプなんですけど、許せないところってすごくいっぱい持ったまま大人になってきたなと思って、それが今も残っているところはあったりするんですけど、発達障害という言葉で、自分に対しても、家族に対してもすごく肩の荷をおろすことができて救われた部分があったので。

 そうやって1個ずつおろしていって、最後、一緒に笑って、こういうことあるよねといって話したり、漫画を読んでいただいたらうれしいなと思っています。

 

岩波:ありがとうございます。あまり脈絡なくいろいろお話を伺ってきたんですが、もし会場の方から漫画のことでもご本人についてでもご質問があれば。――じゃあ、前の方、どうぞ。

 

参加者○○:楽しい話をありがとうございました。私はASDということでこちらの病院にお世話になり始めたんですが、困り事としては衝動性と多動性もあって、そちらは薬をいただいて対処してもいるんです。

 注意欠如はないと思っています。メーンはASDだと自分でも納得しているんですが、お2人のエピソードはすごく共感するところも多いし、ああ、あるね、あるねと、よくわかるところもあったりするんですね。過集中の話として言われることとか。

 あと、先ほど言葉が降ってくるという言われ方をしたことは、これは私も最初に聞いたのは、詩人の友人がいて、その人が詩の言葉というのは降ってくるんだという表現をされたのがすごく腑に落ちて、ずっと残り続けていて、よくわかるところがあるんです。ただ、自分はわかると言いつつも、それはASDとどうかかわっているのかということになると、今すごく混乱もしているんです。

 なので、ちょっとお尋ねしたいのは、ADHDの漫画家さんの知り合いはどうもおいでのようだなということは話の中でわかったんですけど、ASDのお知り合いというか、その方とのエピソードというものが全然見えなかったので、そういうところへの広がりって、何かもっと豊かに語っていただけるところはないかなと思ったんです。もし可能だったらお願いします。

 

町田:はい。私たちがADHDしかないので、どうしてもADHD寄りのお話が多くはなっちゃうんですけど、この1巻の中に、ASDとADHD、両方をお持ちのカメントツ先生という男性の漫画家の人が出ていらして、そこでASD、ADHDのお話をしているのと、女性の方でASD、ADHD、両方をお持ちの方お1人と、ASDのみの女性の方を取材させていただいてご紹介はしてるので。

 人それぞれなので、それを読んでもっとわかるなと思うかどうかはわからないんですけど、よかったら読んでみてください。営業みたいになっちゃうんですけど(笑)。

 

神成:私もASD傾向をお持ちの作家さんの担当もさせていただいていまして、まだ診断がついているわけではないんですけれども、ご自身でASDの傾向があるとおっしゃっている方がいらっしゃいます。

 あと、誰にでも伝わる話かはわからないんですが、私、最近、漫画の画面を見て、この作家さんはADHD傾向か、この方はASD傾向かというのが何となくわかるようになってきまして。

 

町田:わかります。

 

神成:わかると思います、多分。ADHDの方は、全然悪い意味じゃないんですけど、結構画面が白めなんですよね。ご自身が見えている世界を抽出して描いているので、ご自身にとって大事なこと以外は見えていない、描く必要を感じていないのだろうなと。逆にASDの方は見えている世界の全てを画面に再現したくて細部までこだわりたいから、結構緻密な画面の方が多くて、全然白いところがない、ずっと画面が黒いみたいな感じ。

 

町田:カメントツ先生もそうです。

 

神成:カメントツ先生の画面はASD傾向だと感じますね。本当に細部までご自身のこだわりを張りめぐらせて描いていらっしゃるという感じで、多分、ご自身の中に物語がもうあるから、担当とディスカッションして物語をつくるというよりは、ご自身の中のものをどんどん深めていくという形の方が多いんじゃないかというのが、私が接している方の中なんですが、印象があります。

 

参加者○○:それはすごく納得がありました。

 

神成:本当ですか。よかったです。

 

参加者○○:そういう意味で一つだけ言わせていただくと、先ほど水木しげる先生がADHDではないかと触れられましたけれども、むしろASDのほうがより濃い方のようなふうに私は思えているんですが、どんなもんでしょうね。点描ですごい緻密な背景を描かれたり、そういうようなものを見た印象が強烈だったりするもので。

 

岩波:まあ、いろんな説があると思うので、それは何が正しいということはもう亡くなられた方なので言えないと思うんですが、一つは水木さんについては子供のころのエピソードが非常に強烈で。

 何でしょうかね、いわゆるASDで見られる人づき合いの悪さみたいなのは全くなくて、むしろ餓鬼大将的な存在で、子供を引き連れて、境港でしたかね、町のあちこち行って、あちこち悪さをして、いたずら好きで非常に怒られたみたいな。ある意味、ADHDの方によくある典型的なエピソードがあるので、そういうところから、どちらかというとADHDではないかと考えられてるんですね。

 ありがとうございます。それでは、ほかに。――じゃあ、前の方、どうぞ。

 

参加者○○:それはすごく納得がありました。今日はどうもありがとうございました。「マキとマミ」は私が本屋で働いてたもので最初に手にとって、私が買ったら息子と娘が好きになって、「発達障害なわたしたち」も息子が買ってきてくれたんですけども、それを読んで、私って……。

 娘がASDとADHDでこちらでお世話になってるんですけれども、いろいろ本とか読んでると、あれ、私もADHDかなとかとずっと思ってたんですが、今回この本を読んで、私、妹さんとそっくりと思って、改めて自分もそうだったんだなというのがわかったんです。

 先ほど3人きょうだいでとおっしゃって。息子がいるんですが、息子も小さいとき、すごく忘れん坊でひどかったので、もしかしたらお姉様、上の方もあったのかなと思ったりもしてるんですけれども、ごきょうだいでも、妹さんはそうですけれども、上の方もそういう傾向はありましたでしょうか。

 

町田:ありました。あります。本当にわかりやすく。タイプはちょっとずつ違いますけど。姉は多分、衝動がすごく強いんじゃないかというので、今は仕事の関係上、受診は控えてるんですけど、一段落したら岩波先生のところに行こうかなと言ってます。3姉妹でお世話になる予定で、よろしくお願いします。(笑)

 

参加者○○:ありがとうございました。ずっと楽しみにしていますので。

 

町田:ああ、うれしいです。ありがとうございます。

 

参加者○○:ありがとうございます。

 

岩波:ほかに、感想でも質問でもよろしいですけど。――じゃあ、そちらの方、お願いします。

 

参加者○○:よろしくお願いします。先ほどちょっと私が聞き取れなかったのかもしれないんですけど、町田先生、ご両親様のどちらかも同じような職業っておっしゃいました? 違いました?

 

町田:言ってないです。

 

参加者○○:全然勘違いして、ごめんなさいね。それをちょっと勘違いしましたので。

 

町田:大丈夫です。

 

参加者○○:実は私は、2年近くになるんですが、夫はもう後期高齢者なんですが、おかしいおかしいって結婚生活で何十年もきて思いまして。それで岩波先生に診ていただきましたら、そこもそれですねと言われたんですが、2回目も診察してほしいんですけど、本人はいまだに絶対違うと言って拒絶してまして、私、ほんと困っちゃって。

 だから本とか書物とかそういうのでしか。夫の先生の診察を通していろいろ自分も学びたいと思ったんですけど、私はおかしくない、おまえのほうがおかしいって、ずっとそういう行け行けどんどんの発達で、暴言とか暴力とか困っちゃってるんですけど。

 それでお父さんのことがわかったって。息子が2人いて、40代なんですが、言ったら、次男は特に、いろんな本を読んだら、子供のときから衝動的とかちょっとありましたので。兄は全くそういうのはなくてきたんですね。下はあったので、そうだって、こうこうこういうふうに先生から判断されましたと言ったら、次男は、ああ、もう俺の人生終わったって本気で言ったのがいまだにずっと尾を引いてて。

 私、家の中もそういうので、兄もひょっとしてそんな感じということで、男3人が全部そんな感じで、ほんとずうっとつらい生活を送ってきたので、今のこういうふうに、町田先生とか皆さんのね、自分の特性として……。今日の講義の前半を聞いてても、自分の発達障害だということを誇りに思って、自覚して生きてればほんとにすばらしいものに出会えるんだ、自分の知らないところが開花するんだって、私、すごくわかりました、ほんとに。

 

神成:ああ、よかった。

 

参加者○○:でも、次男の一言、先生のあれでわかったと言ったとき、俺の人生もう終わったって、本気でそう。

 県外にいるんですけどね。ずっと尾を引いてまして、今日すごく励みになりまして。

 

 

神成:よかったです。

 

町田:よかったです。

 

参加者○○:そういう方はいっぱいいらっしゃいますのでね。ありがとうございました。

 先生、今度、県外なんですけど、次男をアポをとって判断していただきます。今日のこともメールで連絡したいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

 

神成:よかったです。

 

町田:よかったです。ありがとうございます。

 

岩波:貴重なコメントをありがとうございました。ほかにフロアの方からどなたか、ご意見でもご質問でもいいんですが。次の演者である八木先生がそこにいらっしゃってるんですが、もしよければ今のお2人のお話に何かコメントでもご質問でもしていただけないでしょうか。

 

神成:よろしいんですか。

 

岩波:岩手医大の教授の八木先生で、この後の講演の演者をお願いしております。

 

八木 淳子(岩手医科大学附属病院児童精神科 教授。以下、八木):

 ありがとうございます。私、この前の方も、その前の先生のお話も聞きながら、こんな楽しい会だったのかと思って、自分が用意してきた何だかつまらないのをこれから話さなきゃいけないのかと思って、すごく暗たんたる気持ちになってたんですが。

 

神成:絶対にそんなことないですよ!

 

八木:本当に。本当に楽しくお話を伺いました。

 発達障害という言い方で言うことになっているからみんなそういう言い方をすると思うんですけど、先ほど岩波先生も企画力とおっしゃいましたが、お一人お一人は、いろいろなエネルギーにあふれる人たちってほんとに多いなと思います。

 それで、好きなことをするといいんだということはよく言われるんですけど、得意なことを探さなきゃいけないとか、人よりすぐれていることをしなきゃいけないということに勘違いして伝わると、何か人より秀でてなければ終わりみたいな感じのメッセージも学校で伝わることがあって。

 でも、それじゃないんだということを、お2人がすごくほんとに……。人から認められるかどうかとかそういうことではなくて、自分が好きかどうかというところに徹底してこだわっていくと結局活路が開けてる人が多いし、いろんなあるあるを自分自身もそうだよねと思いながら、いろいろな編集者さんのお顔が浮かんで、ごめんなさいと今心の中で思いながら聞いていました。

 

 でも、それでも助けてくれる人がいる。この人のこういうところを生かすために、みんなで助けて分担でやっていくと思ってくれる人がいる。だからSOSを出せるかどうかというところってすごく大きいと思うので、お2人のお話を聞いてて、そこも実はものすごくうまくいってるんじゃないかと思いました。

 自分ひとりで自分の能力を生かして成功している人ばっかりじゃないというか、むしろそうじゃない人のほうが多くて。成功している人ってほとんどは、ほかのことは何もできないとか、ほんとにごめんなさいと言って歩いてるけれども、これはできるというような人はみんなで助け合ってやれてるんだなということをお話を聞いてて思って、楽しかったです。どうもありがとうございました。

 

町田:うれしいです。

 

神成:ありがとうございます。

 

岩波:ありがとうございます。大変すばらしいまとめになったと思うんですが、あとご発言したい方はいらっしゃいますか。大丈夫でしょうか。――はい、お願いします。

 

神成:八木先生、ありがとうございました。

 先ほどご質問くださったお母様のお話を聞いて思い出したエピソードをご紹介したいんですが、先ほどからお話に上がっている、ADHDとASD、両方をお持ちのカメントツ先生という方の子供時代のお話なんですが、漫画ですとこちらのページです(単行本P.)。

 カメントツ先生は逆に、子供時代に親御さんが診断をしてくださらなかったというか、病院に連れていってくださらなかったというようなお話があり、大人になってからご自身で受診して、「自閉症だったよ、僕のせいでもないし、お母さんたちのせいでもなかったんだよ」と言ったら、お母さんが「知ってたよ」と。

 傾向は絶対にわかっていたのに、そうかなと思って本とか読んで勉強していた、でもあなたは大丈夫かなと思ってたんだよね、ということに対して、全然大丈夫じゃなかったということをおっしゃっていて。

 

 それは、家庭の問題というよりは、社会が発達障害の診断を受けることでバッドステータスというかスティグマを負うみたいな空気って、きっと質問者さんの次男さんもそういうふうに思われたんだなと思うんです。

 今は社会が変わってきていると思うので、診断されたことによりご自分の傾向がわかって対策ができることというのがたくさん生まれると思いますので、全然人生終わってないと言ってください。ということをお伝えいただきたいのと、ぜひ次男さんにも読んでいただけたらと思います。

 

岩波:ありがとうございます。今のお話にありましたように、生きてる中でいろいろ難しいようなことが多数あると思いますけど、どこか前向きに進んでいこうというお気持ちを持てば必ず活路は開けるのではないかと。

 実際、外来の方でも、一旦失敗して不登校になったりひきこもりになったりしている方も少なからずいらっしゃいますけども、その中から新しい道を見つけてかなりの成功をおさめている方も結構いらっしゃるので、決して諦めずに前を向いていくというお気持ちはぜひ持っていただければと思います。

 今日は、町田先生、神成さんに非常におもしろいお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 

神成:ありがとうございました。

 

町田:ありがとうございました。

 

岩波:では、これでこのセッションは終わりといたします。どうもありがとうございました。(拍手)

 

神成:岩波先生、単行本のアナウンスをしてもよろしいですか。

 

岩波:はい、どうぞ。

 

神成:出口のほうで、今回、こちらの「発達障害なわたしたち」を販売していただいているので、よろしければぜひお買い求めください。最初の10冊は町田さんのサイン入りですので、よろしければ。

 もしかしてお持ちいただいている方で町田さんのサインが欲しいというような方がいらしたら、ぜひお声がけください。よろしくお願いいたします。

 

真田:これをもちまして、令和5年度昭和大学付属烏山病院公開講座及び東京都精神科医療地域連携事業公開講演会を閉会したいと思います。本日会場にてご参加の皆様には本会のアンケートをお配りしておりますので、ご協力いただければと思います。出口で回収したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 Zoomでご参加の方はチャットにアンケートのURLを掲載しておりますので、そちらにてご協力お願いいたします。本日はご参加いただきまして、どうもありがとうございました。

(終了)