令和4年度 昭和大学附属烏山病院 秋季公開講座


2022年11月12日(土)14:00〜15:30 昭和大学附属烏山病院 入院棟1F 食堂ホール

司会 水野 健(昭和大学附属烏山病院 作業療法士。以下、水野):

 それでは後半は中村善文先生にご講演いただきます。中村先生は精神医学教室にいらっしゃる先生ですが、精神科専門医でもあります。精神科専門医といいますと学会が認定したれっきとした専門医ですが、非常にたくさんのレポートを書いたり、それを評価してもらうという、結構ハードルが高いですね。そういったところも通過していらっしゃって、知識も経験もある立派な先生であります。

 デイケアにも深くかかわっていらっしゃる先生ですので、今回は、先ほどのお話にもありましたが、どんなプログラムをやっているのかとか、精神科医から見たようなお話が聞けるかと思います。

 それでは先生、よろしくお願いします。

演題② 『デイケアと私と思い出

     中村 善文 昭和大学精神医学講座 医師

中村 善文(昭和大学精神医学講座 医師。以下、中村):

 改めまして、医師の中村善文です。デイケアを月曜日から木曜日で利用している方々、ご無沙汰しております。去年の公開講座が終わった後に院長から「来年は先生よろしく」と言われたとき、まさかねと思っていたら、本当にやることになるとは、立っている今も信じられない状態ですが、よろしくお願いします。

 タイトルは「デイケアと私と思い出」です。

 略歴と資格について説明するようにという指示がありましたので作成を行いました。見ていただくとわかりますが、精神科を始めてからずっと烏山病院にいるという状態があります。こういう感じで仕事をしております。

 

 本日の内容です。今回の講座では、先ほどの五十嵐さんの説明とかぶりますが、まず烏山病院デイケアの紹介、今回のメインの一つであるSST(Social Skills Training)、そして就労準備プログラム、この三つについて話せればと思っております。

 

 そもそも私がデイケアにかかわるようになりましたのは、2018年10月の北海道で行われた成人発達障害支援学会に参加したときのことです。そのときは薬物療法だけでは不十分な発達障害に対するデイケアの重要性が印象に残りました。また、そのときに参加していた烏山のデイケアスタッフの方々に、常駐してくれる医者が欲しいと声をかけられました。そのため、当時、病棟勤務がなかったこともありましたので、同年11月から烏山病院のリハビリテーションセンターのデイケアの仕事に参加するようになりました。

 その後は時々、病棟の医者が少ないので病棟業務に戻りながらも、去年の4月、ほかの病院に一時的に出向するまでデイケアの担当として勤務を続けておりました。

 

 デイケアで先生は何をやっていたのかと言われそうですが、大きく分けて四つです。一つずつ説明していきます。

 まずは、デイケアを開始する利用者についてほかのスタッフに状態を説明し、適応可能であるかどうか、どのようなかかわり方が必要なのかを一緒に検討することをやっていました。デイケアは多くの人が利用しているため、対人関係の問題が生じる可能性がどうしても出てきます。その可能性を少しでも減らすために、どう対応したらいいかということについて相談をしていっていました。

 次に、身体の問題が生じた利用者の診察を行いました。身体面の問題は頻度こそ低いですがゼロではありません。万が一のときは診察し、必要な場合には病院の設備で検査や処置をすることもありました。

 三つ目は、精神科面で問題を抱えている人に対して、どういった点で本人が悩んでいるかを共有し、アドバイスや、必要な場合は頓服の処方などを行いました。人によっては、主治医に対しては話しにくいけれども、デイケアのスタッフには話しやすい悩みということがあります。また処方の方針などに疑問を持つということもあります。このため、必要なときは適宜相談に乗って、アドバイスや、外来で不足したときの頓服の処方を処方外来で臨時でやって対応ということもやっていました。

 最後に、電話連絡やカルテ記載を通して主治医に報告するなど橋渡し的な役割を行い、主治医の先生との情報共有で利用者をフォローしていくということをやっていました。主にこの四つです。

  

 次の(15ページ上段の)スライドです。烏山病院のデイケアのプログラムは、先ほども説明がありました発達障害専門プログラムを含めますと、大きく分けて三つあります。生活支援プログラム、就労準備プログラム、発達障害専門プログラム、この三つです。

 

 発達障害専門プログラムがデイケアの活用の入り口であり、デイケアの利用者の多くがショートケアから導入しています。専門プログラムで集団の活動やデイケアで過ごすことになれるようにしていきます。そして、専門プログラムで学んだことをほかのデイケアのプログラムやメンバーとの交流の中で実践練習をして、一定の訓練を経て、こちらの地域活動などの次のステップへと進んでいくということになります。

 デイケアのプログラムの生活支援コースは、主に慢性期の統合失調症の利用者などを対象とした、音楽プログラム、陶芸プログラム、軽スポーツなどの生活リズムの構築や活動性の改善を目的とした昔ながらのデイケアのプログラムです。人といることが極端に苦手な発達障害の方も、何か活動しながらやれれば人の輪の中に入れるという体験を積むことができるため参加しています。

 また、就労準備コースは、就労を目指す統合失調症の利用者や発達障害の利用者を対象とした、就職に向けてのパソコンのスキルの向上や、就活に向けての知識習得などを目的としているプログラムです。

 一見すると、この二つ、それぞれどっちかしかできないように見えますが、人によっては両方混在してプログラムに参加しているという人もいます。

 

 発達障害専門プログラムです。烏山病院ではASDとADHDを主に対象としており、それぞれ、平日のプログラムと、就労者をメーンとした各週土曜日のプログラムに分かれています。また、ASDグループは、自閉傾向が強いか、そして集団で問題ないかでさらに二つに分かれています。木曜クラブとサーズデイがそれに当たります。また、近年では長期休暇中の大学生を対象とした学生グループというものもできています。

 

 烏山病院のデイケアです。半年に1回のペースで、利用者はスタッフとドクターそれぞれとデイケアの治療計画を立てていきます。その際に重要なこととして、半年以内で達成できる短期目標と、数年かけて行う長期目標を設定していきます。何でこういうことをしているかといいますと、こちら(16ページ下段)のイラストにもありますように、目標設定の際には、ただ長期目標を立てるだけではモチベーションを保つことが難しいわけです。このため、短い期間で少しでも長期目標に近づける短期目標を幾つも設定していって、最終的に長期目標に行けるようにする、このことが非常に重要となってきます。

 

 それではSocial Skills Trainingについての説明を行っていきます。以下、略称のSSTと呼ばせていただきます。

 SSTとは、困難を抱える状況の総体を、ソーシャルスキル、いわゆる社会技能と呼ばれるコミュニケーション技術の側面から捉えて、そのような技術を向上させることによって困難さを解決しようとする技法のことを指します。認知行動療法の一つとされています。ただ、勘違いしてほしくないことは、慢性の精神障害に対応した治療技法として開発されたものであり、発達障害に特化したものではありません。

 烏山病院のデイケアでは水曜日の12時半から1時半までの1時間をかけて行います。この後説明するやり方を見ていただくとわかるのですが、一度にたくさんの人が参加するというタイプのプログラムではありません。そのかわり内容は充実しているものであると思っております。

 

 SSTの進め方に行きます。まず、こちら(18ページ上段)に図が出ています。右の図のように円形の座席で実施しています。しぐさなどを見るために、お互いの顔が見えるように組むことがポイントとなります。本日の利用者の現状を話してもらい、生活上困ったエピソードがあるのなら、そのうちの一つを選んでいきます。なお、その困っていることの中には、面接で気になる質問といったものも可能です。そして、それをイメージした場面を設定していくことになります。

 場面の設定が終わりましたら、その場面のロールプレイを代表者に演じてもらうことになります。この時点では、問題を抱えている本人がロールプレイをすることもあれば、それ以外の利用者がすることあります。場合によっては私を含めた病院のスタッフが入ることもあります。

 そして、このロールプレイを見て、ほかのプログラム参加者が、よかった点と、こうしたらよりよくなるのではないかという改善点を述べるという正のフィードバックを行っていきます。また、ホワイトボードにもそのフィードバックの内容を書記の担当が書いていくことになります。

 その提案された改善点を踏まえて、もう一度同じ設定のロールプレイを、今度は問題を抱えている本人が行います。さらに、そのよかった点を指摘して、今回のテーマに関連した宿題を各自が設定して、次回までに実行を目指すということになります。今出てきたのはSSTの宿題カードです。この際には、こっち(19ページ上段)の写真にあるような宿題カードに記載したテーマを実践したかを、やってもらった相手に対してコメントしてもらうという構造になります。

 ここまでがSSTの流れですが、説明だけではよくわからないと思います。そのため、リハセンターのスタッフさんと録画したビデオをこれから流します。

(ビデオ上映)


 

 このような感じで流れをやっていきます。途中で相談した相手の名前が違わないかというところがありますが、テンパって間違えました。申しわけございません。

 

 次のスライドに行きます。疾患の違いによるSSTのテーマの違いです。まず統合失調症などのほかの疾患の方の場合ですと、傾向として、その場面での積極的な話し方がテーマになりがちという印象がありました。一方の発達障害の方の場合ですと、傾向として、その場面に応じた話し方をテーマにすることのほうが多い印象を受けました。

 ここから先はあくまで個人的な印象です。統合失調症などのほかの疾患の方の場合ですと、既に話す場面に応じた話し方はある程度できているので、それをどの頻度で話すかというのが問題ではないかと考えられます。一方の発達障害のほうですと、積極的に話すことそのものはできているので、場面に合わせて問題を起こさないようにどう話していくかということが課題ではないのかと思います。

 

 会話というのは大体、キャッチボールによく例えられていますよね。会話のキャッチボールはしっかりやろうとよく言われています。そういうわけで、SSTのテーマの違いをキャッチボールに例えてみます。これはあくまでも個人のイメージなので、その点はご了承ください。

 統合失調症などのほかの疾患の方の場合だと、けがのため、相手までボールを投げ飛ばせる筋力等が低下しているというイメージがあります。一方で、投げ方のコツや投げるフォームというものはある程度保持しているので暴投そのものはしにくい。そのため、少しでも以前のように投げるためにリハビリをしているというのがイメージになります。一方の発達障害の方の場合ですと、相手のところまでボールを投げる筋力等はあります。一方で、投げ方のコツやフォームの乱れが目立つため、そのままではでたらめな方向に暴投してしまうリスクが高い。そのため、フォームの矯正、そしてコツをつかむために練習をしているというイメージがあります。

 

 SSTのポイントです。重要なのは、ささいなことでもロールプレイのよい点を見つけていくことです。そして、その上で、よりよくするためにどこを改善するかということをしっかり言っていくことが大事になってきます。そして、その改善点をちゃんと指摘するためには、ロールプレイをしっかりと見ていく必要があるわけです。さらに、書記の方は細かい点も見やすく記載していただくということが必要となってきます。

 また、翌週までの宿題を設けることで、それぞれロールプレイでのポイントをどう捉えて日常生活に活用していくかということを知ることができます。

 なお、烏山病院では、宿題が出た場合、出席やその日の内容をまとめたファイルに手づくりのシールを張るようにしています。具体的に言うと、こういう手づくりのシールをスタッフがつくって張るようにしています。ちなみに、(20ページ下段の)左端の太陽っぽいのが私がつくっているやつです。個人的には、岩波院長や発達障害医療研究所の太田晴久先生あたりにもシールをつくってもらえればなと、内心、ちょっと願っていたりしています。

 

 私がSSTに参加してよかったことや気がついたことです。まず、どんな小さいことでも人の長所を見つけるということを学びやすいという点です。前のスライドにもあるように、どんなささいなことでもよい点を見つけて評価していくということが、このトレーニングのポイントとなってきます。このため、よかった点を指摘するために観察をするという力が養われていきます。また、2回練習を行うスタンスは、経験を積むことや場数を踏むということが大事だと思います。また、さまざまな人の意見を聞くということで、さまざまな可能性や多方向からの視点で考えていくことを行いやすいと思います。

 気がついた点です。宿題があることでその日の内容を振り返りやすい。また、その宿題のテーマもその日の内容をもとに自分で考えていくということなので、取り組みやすいかなというのが気がついた点です。

 

 デイケアで知って診療で活かしていることです。三つあります。まず一つは、相手の話で、精神療法としてのアドバイスをする際にどこが重要とすべき点かということを以前より考えて聞くことができるようになりました。

 また、相手との会話の間が以前よりはとりやすくなったかなと思いました。

 最後に、相手の微妙なしぐさにも注意が向くようになってきました。この点を、デイケアで知って診療で活かしているところとして挙げさせていただきます。

 

 就労準備プログラムについての説明です。デイケアにおける就労支援の考え方です。まず職業準備性モデルです。こちらは訓練を経て就労準備を高めてから就職活動をするというスタイルです。

 一方の援助付き雇用モデル、IPSモデルといいますが、こちらについては就労準備性にかかわらず就労意欲を重視していくスタイルで、就労後にその環境で訓練していくようにしていきます。

 発達障害の方には、就労を想像しにくいという傾向が見られ、環境の影響を受けやすいという問題もあるので、IPSモデルのほうが合っているのではないかと考えられます。ただし、いずれにしても最低限の準備性(社会常識)と受け入れ側へのサポートはどうしても必要になってくるかなと思います。

 

 こちら(23ページ上段)は就労準備ピラミッドです。就労に必要な基礎スキルとしては、健康の管理、日常生活の管理、対人技能、基本的労働習慣、職業適性をまとめたもので、見たらわかりますが、この下の部分がしっかりしていないと就労継続が難しい可能性があると言われています。残念ながらデイケアで全てを整えるということは難しいですが、最低限度の準備性は求められているためプログラムに取り入れています。

 デイケアの就労準備プログラムは毎週火曜日の午後に行っており、主に対人技能ですね、挨拶や会話、非言語のコミュニケーション、意思表示、言葉遣い、協調性といったものを中心に行っています。このほかに、就労に関する社会資源、求人票の見方、履歴書や職務経歴書の作成、面接の練習、合理的配慮、自己PR、就労支援機関との合同プログラムなどを行っています。

 

 現在の就労準備プログラムの理想としては「就労パスポートの記載ができること」とあります。就労パスポートは、職場の定着に向けて、働く上での自分の特性やアピールポイント、希望する配慮などについて、支援機関と一緒に整理し、事業主等にわかりやすく伝えるためのツールです。就労経験や仕事上のアピールポイント、体調管理と希望する働き方、コミュニケーション面、作業遂行面を記載していきます。部分的に映っているものがこれです。

 この就労パスポートのメリットとしては、自分だけでは気づけなかった特徴を把握できる、それによって自分の特徴をより理解することができる、支援者に自分の特徴を理解してもらい、自分に合った支援を受けやすくなるという3点がポイントとなってきます。ただし、ほかのツールにも言えることですが、本人がどう使うかをよく考えて使用していくという点がポイントとなってきます。 

 

 就労準備プログラムの内容の例です。就労に関する社会資源。これについては就労を支援してくれる社会資源についての説明、紹介をしていきます。求人票の見方。ハローワークなどが出している求人票の見方を紹介して、何を大事にしたいかなどを考えていくようにしています。履歴書や職務経歴書の作成。これはサンプルを用いて学んでいくことになります。面接練習や合理的配慮、自己PR。自分自身のPRや、合理的配慮、会社に配慮してもらいたいことを考えて面接の練習をしています。

 そして、こちら(25ページ上段)は就労支援機関のアイ-キャリア様のご協力を得て行うプログラムです。全4回に分けて行っています。

 

 まとめです。烏山病院のデイケアでは、発達障害の方向け以外にもさまざまなプログラムをしております。そしてプログラムの見学は随時受け付けております。興味がある方は主治医と相談の上、参加を検討してみてください。また、最近、コロナの流行などもあって、情報を公表したいということがありますのでホームページも作成しております。ぜひごらんください。

 

 本日はご清聴まことにありがとうございました。(拍手)


司会 音羽 健司(昭和大学医学部 精神医学講座 医師。以下、音羽):

 中村先生、どうもありがとうございました。デイケアの非常にわかりやすい具体的な事例も踏まえてお話しいただきました。途中ビデオで、忘年会ですか、上長に挨拶するという。今年も岩波院長とか太田晴久センター長とかに挨拶があるのかなと期待しております。

 それでは質問に入りたいと思います。まだ時間がございますので、前半の五十嵐先生、後半の中村先生の内容にかかわらず質問を受け付けたいと思います。よろしければどうぞ。

参加者○○:就労パスポートのメリットについてですが、「但し本人がどう使うかをよく考えて使用する事がポイントとなります」と書いてあったんですが、これはどういう意味でしょうか。「どう使うか」というのは。

中村:ツールとしては便利なものがあるにしても、ちゃんとそのツールをうまく使いこなせるかというところは最終的には個人の判断になるわけですね。ですので、そういう意味で、これを使ってしっかりやるべきか、それとも使わないでいくべきかを含めて、本人の判断によるなというところがあるのでこういう書き方にしています。

参加者○○:自分の特徴を出すか出さないかは本人次第で決めるというか。

中村:そういうことですね。一般枠で入るか、障害枠で入るか等も含めて、そこはちゃんと自分で考えた希望するものというのはあると思うから。

参加者○○:ありがとうございます。

水野:ちょっとだけいいですか。

 私もこのプログラムを担当していたことがありますので補足をさせていただきたいと思います。こちらのプログラムで就労を目指す方で、いわゆる一般就労ということで雇用主に自分の障害とか特性を明らかにせずに働く場合と、配慮を受けられるように障害とか特性を明らかにして働くという、大きく分けて二つの働き方がある。

 この就労パスポートをよりよく使う場合というのは、いわゆる障害枠での就労を希望される方が多いのかなと。その就労パスポートを利用するかの前に、まず自分がどちらの形式で働くかというところも踏まえて考えていただきたいというところで、先ほどの中村先生のお話になるかなと思います。

 という意味合いがあるのかなと思いますので。

参加者○○:ありがとうございます。

 音羽:ほかはいかがでしょうか。デイケア全般でも構いませんし、いろんなプログラムの内容についてでも構いませんので、ご質問がありましたらよろしくお願いします。

参加者○○:前半の最後の質問に出ていたガントチャートというものを私は初めて聞いたんですけども、どういうものか教えていただければありがたいです。

音羽:五十嵐さん、お願いしてもよろしいでしょうか。

水野:前半の最後だから。

五十嵐:これは私が出したものでは……。質問、ご感想の中で「ガントチャート」という言葉が出ましたが、どういうものですか。

水野:間違っていたら申しわけない。恐らく、ガントチャートというのは工程を明らかにするような、流れが見えたりするようなものなのかなと。

五十嵐:PDCAみたいな。

水野:この時期までにこういうことをやりましょうとか、工事現場とかでよくあるもので合っていますかね。大丈夫ですね。という理解なんですけど。恐らく、いろいろなたくさんの方で物事を進めていこうとすると、それぞれの思いであったり自分の考えをうまく伝えられないような場合もありますので、ぱっと見てわかるような見える化をするというところで一つメリットがあるのかなと。

 もう一つは、発達特性をお持ちの方で、見通しもつけない、今後どうなるんだろうというところがわからなくて不安になってしまって、今何をするべきなのかとか、何をすると後々よい結果、効率がよくなるのかなというところを考えるのが苦手な方もいらっしゃるので、見える化するようなものがあるといんじゃないかというご意見だと思っておりますが、よろしいでしょうか。もしかするとふだんの生活の中でも使えたりするようなものかななんていうのも今思いました。

五十嵐:見える化、思考整理術とかでいうと、今日OB会でやっていたマインドマップとかも発達障害特性に有効なのではないかと考えています。有効性を考えている方が集まって、OB会でマインドマップサークルが行われていますね。どういうものかご存じですかね。

 メインテーマがあって、そこから枝分かれするように思考が展開していくのを図示化していくという。トニー・ブザンでしたっけ。合ってる? ――ありがとう。という方が開発した整理術であります。そういったのをプログラムで取り組んでいくのはすごくいいなと思ったので参考にさせていただきます。ありがとうございます。

音羽:ご質問、ありがとうございます。お願いします。

参加者○○:今デイケアに通わせていただいているんですが、ほかのメンバーの方でも、デイケアのスタッフの雰囲気とかが非常によくてよかったという声を聞くことがあるんですね。今のお話の中で、院長のお話とか医師の方の忘年会のお話とかは自分はあまり共感ができなかったんですが、現場というか、直接我々と接していただいているスタッフたちの声が医師の方のほうに上がっていく仕組みというのはあるのかなという質問です。

音羽:中村先生、お願いします。

中村:まず、デイケアスタッフ側からドクターのほうに直接電話をかけたり、カルテに記録を残したりということはあります。また、場合によっては、まだ私がデイケアにいたころだと、デイケアのほうから「○○先生」という感じで相談をするというということもやっていたりしました。基本的には情報がちゃんと伝わるように行っていくということは欠かさずやっていました。

参加者○○:ありがとうございます。

五十嵐:中村先生のおかげで、とても風通しはよくなっているように思います。ただ、さっきのデイケアの変遷のところでも伝えましたが、デイケアは長い間、精神科のドル箱と言われたんですよ。この病院だけじゃないですよ。全国的に、デイケアに通わせておけばお金になる、何とかなるという歴史があったので、デイケアに関心がある医師がどれぐらいいるかと言われると疑問ですね。どう思われますか、音羽先生。

音羽:結構来ましたね。(笑)私も、うつの方のリワークプログラムに参加したこともあります。実際に参加してみると、患者さんがどう考えているのかとか、いろんな意見が出ている場面を見ます。そういったところは、すごく参考になるなというところがあります。こんな特徴がある患者さんなんだとか、そういうところがわかりますので、私自身も勉強になるなというところがあります。

 デイケアでの出来事はスタッフの方のカルテにも記載していただいていますので、それは主治医にもフィードバックがかかっているというところかなと思います。

 中村先生に一つ質問させていただければと思います。主治医にはこういうことを相談しているんだけど、デイケアではこういう相談をしたいと。どういうケースだと相談に乗りやすいということはありますでしょうか。

中村:例えば薬について聞きにくいから、「これ、どういう薬なの?」と聞かれることはありましたね。薬の飲み合わせとかそういう質問もあって、薬系が多かったというのは印象的でしたね。

音羽:ふだんの診療ではちょっと聞きにくかったり、聞き漏らしてしまったとか、デイケアに通っていらっしゃる時間があれば聞きやすいのかなというところかなと思います。よろしかったでしょうかね。

 ――はい。ありがとうございました。あと一つ二つぐらい質問をいただければと思います。

参加者●●:申しわけないんですが、デイケア有用性のチェックポイントのところで、「QOL」という横文字が言葉の意味がわからなくて、教えていただきたくて。

五十嵐:私のスライドですね。説明が足りなくて申しわけありません。「Quality of Life」の略で、生活の質、自分の生活がどれぐらい高く保たれているかという意味です。

参加者○○:ありがとうございます。

音羽:ほかはよろしいでしょうか。お願いします。

参加者○○:デイケアの診療報酬が下がってきているということをお伺いしたんですが、政策的な方向として縮小の方向に行くという、医療体制の変更が最近あったということだったんでしょうか。もともと入院患者を減らすために受け皿としてデイケアが出てきたということは、入院患者を削減しようという政策もなかなか進まないという状況があるんでしょうか。この二つの点についてお伺いしたいと思いました。

五十嵐:診療報酬についてですが、わかりにくいんですが、下がってきています。

(5ページ下段の)スライドにあるように、2009年の段階では703点だったんですが、今は700点です。3年を超えている方に関しては630点なので、約70点下がっている。プラス、お食事代は持ち出しになっているという意味では、かなり収入ダウン。

 プラス、個別計画を立てなさいという改定がありました。これは統合失調症の方に従来やっていた一律のプログラムではなくて、体操をやりましょうとか、手芸をやりましょうという、全員に対して同じプログラムをやるというものではなくて、個別の特性やニーズに合わせてたくさんプログラムをやりなさいということなんです。

 なので、何ていうんでしょうか、いい言葉が見つからないんですが、手がかかるけれどもコストが下がってきている、なのに人員基準は変わっていないという意味ではかなり苦しくなっているということがあります。

 デイケアの変遷のところですが、長期入院患者さんの受け皿になり得ていないか、その役割がなくなったかと言われたら、決してそうではなくて、今も急性期病棟から入院中からお試しで来る方もおられますし、亜急性期病棟から来る方もおられますし、入院患者さんの退院先の受け皿の役割は今後も担っていきたいとは思っております。

 あとは、デイケアだけではないんですが、精神科薬の改善もあって社会的入院の方は減ってきているという現状もあります。お答えになっていますか。

参加者○○:ありがとうございます。

音羽:ありがとうございました。ご質問があるかとは思うんですが、ちょうど時間も来ましたので、前半の公開講座を終了したいと思います。休憩時間を挟みまして、3時半から公開講演会を再開したいと思います。その間少し休憩をとっていただければと思います。先生方、ご発表、どうもありがとうございました。(拍手)

(休 憩)